「なあ、牡丹。芒じゃなくて俺と一緒に寝ようよー。優しく抱き締めてやるからさー」

 私は、
「結構です!」
 断って、代わりに、ぎゅっと芒を抱き締める。

 芒は、くるりと顔だけ私の方を向いて、
「牡丹お姉ちゃん、大丈夫だよ。幽霊が出ても僕がお姉ちゃんのこと守ってあげるからね」

「ありがとう、芒」

「なんだよー、牡丹まで幽霊が怖いなんて。ほら、俺の所においで。芒より俺の方が霊も寄って来ないぞ」

 しつこい梅吉兄さんに、とうとう道松兄さんが、
「うるさい!」
 叱責すると、梅吉兄さんの顔目がけて枕を投げつけた。見事顔面で枕を受け止めた梅吉兄さんは、お返しとばかり道松兄さんに枕を投げ返して……。

 それを発端に、突如枕投げ大会が始まってしまった。

 幽霊は怖いけど、でも、みんな一緒なら。それに、こんな風ににぎやかな夜は修学旅行みたいで、ちょっと楽しいなって。

 そんなことを思っていると、私はいつの間にか幽霊のことなんてすっかり忘れて。気付かない内に、ぐっすりと眠りに就いていた。