「ルールは簡単。一人ずつ挑戦者に向かって攻撃していくので、竹刀で相手の体のどこでもいいので当ててください。竹刀の先端には赤いインクが付いているので、当たったかどうかの目印となります。また、挑戦者は一度でも攻撃を受けたらその場で失格、チャレンジ失敗となります。
 それでは天正家の最後のチャレンジ、」

「スタートです!」という声とともに、早速一人目の刺客が私目がけて突っ込んで来る。

 私は竹刀を握り締め、相手の左肩目がけて思い切り突いた。すると敵の着ていたシャツの肩の部分に赤い染みができると同時、次の刺客が間髪入れずに飛び出して来る。私は勢いを殺さぬまま敵の手元を打ち払い、竹刀諸共大きく弾き飛ばした。

 天正家並びに番組のスタッフや観覧者達に見守られる中、私はペースを崩さないよう、なるべく手短に敵の肢体に竹刀を当てていく。

「……四十八、四十九、よし、五十! あと半分だぞ、牡丹!」

「はあ、はあっ……」

「牡丹お姉ちゃん、がんばれー!」

「がんばれ、牡丹! お前ならできる!」

 できるって、そう簡単に言われても……。

 正直……、いや、かなりきつい。敵の数も過半数を切ったけど、それでもまだ半分だ。

 だけど。

 女は度胸、根性よ! 世の中の理不尽になんか負けてたまるかっ……!

 額から浮かんでは流れ出てくる汗を手の甲で拭いながらも、私は倒しては次々と襲いかかって来る敵と対峙し続ける。

「八十三、八十四、八十五、八十六……」

「おい、ちょっとまずくないか……?」

「うん。始めの頃に比べて、大分ペースが落ちてきてるよね」

「……八十九、九十! 牡丹、あと十人だぞ!」

 あと十人ほどという所で私の呼吸はもう限界を迎えていて、頭はちっとも働かない。ただ目の前に現れた敵を機械的に処理しているだけだ。

 竹刀を振る腕に力も入らなくなって、足はよろよろと覚束ない。