私が問いかけると梅吉兄さんが、「そうに決まってるだろう」と言った後、
「なんだよ、牡丹。嫌なのか?」

「だって、テレビなんて恥ずかしいじゃないですか」

 お金のためとは言え、ちょっとね。それに、出演してもゲームをクリアできないと賞品ももらえないんでしょう。

 私が渋っていると梅吉兄さんは、
「ちっ、ちっ、ちっ。甘いな、かわいい妹よ。今回、この番組に参加するのは、賞品欲しさだけじゃないんだなあ、これが」

「えっ。他になにかあるんですか?」

「なあに、よく考えてみろ。いいか、牡丹。お前は親父に会いたいんだよな?」

「えっ……? ええ、できることなら」

「だけど、俺達は親父のことを一切知らない。だが、もしかしたら親父は俺達を知ってるかもしれない。
 そこで! だ。 テレビに出て俺達の存在をアピールして、逆に親父から名乗り出てもらうって作戦だ。
 ちなみに、この方法なら宣伝費はタダ! 生きてるか、はたや日本にいるか定かではないが、この番組は全国ネット、ゴールデンタイムで視聴率も二桁と非常に高い。親父が見てないとも限らないだろう?」

「な、成程……!」

 確かに梅吉兄さんの言う通り、一理ある。もしこれでお父さんが見つかれば……! それこそ十万円以上の価値が私にはある。

 私が、
「出ます!」
と宣言すると、
「牡丹はまだ親父のことをあきらめてなかったのか」
と道松兄さんが眉をひそめた。

「当たり前です! 私は絶対にお父さんを見つけ出して、この手でぶん殴ってやるんですからっ!!」

「まあ、まあ、牡丹よ、落ち着けって。親父ももちろん目的だが、賞品獲得の方も忘れるなよ。
 と言う訳で、ささやかな幸福をゲットするために、家族一丸となってがんばろうじゃないか」

 そう指揮を執る梅吉兄さんにならって、
「天正家、ファイトーッ!!」
というかけ声が、朝の静けさが残る家内に強かに響き渡った。