午後からは受け持ちしていた患者さんの引継ぎと、新しく受け持つことになった患者さんのカルテの確認の予定。





入院していた子も退院しているけど、通院はしていて、いつ再び入院してくるかわからない。





時間のできた時に、入院病棟を回ってみた。





一年も経つと、私がいた時に入院していた子はあまりいない。いても、一度退院して、再び入院してきた子くらいで。





それでも顔見ると、わくわくと言っては闘病中の子に失礼だけど、またここで子供たちと一緒に病気と闘っていけるとおもうと、嬉しくなった。





アメリカで学んだ医療は、石川先生がしていることがほとんどだった。




もちろん最新の治療方法もあったけど、薬に関しては、日本で許されていないものがほとんどなので、





どうしても同じことはできない。





でも、指導医にそして、アメリカで教わってきた子供との接し方、子供の味方は、これから全て生かすことができる。





そんなことを考えて歩いていると、





『あー!』





と前の方からナース服で小走りで来るのは・・・





え!?





あれ?





「えーーーーーー!!!!」





病棟の廊下にもかかわらず、つい驚きのあまり声を出してしまった。





自分の声と目の前まできたいつかここに入院していた、






そう森良子ちゃん。





『かなセンセっ!お久しぶりです。』





あの反抗精神旺盛で、病室を抜け出してた彼女が、立派にナース服を着て立っているのを見て、






思わず涙目になってしまった。





その後ろからスタスタと歩いてくるのは、





お久しぶりねのまい!!





『もう、私より先にかなに会うなんて~』





と言いながらも、嬉しそうに近寄ってくる。





『あの時の彼女は、今ここで実習中よ。かな。』




そう、まいもあの当時ここで働いていたからよく知っている。二人で涙目になってあの頃を思い出している。





廊下で話すのもよくないので、ナースステーションの休憩室へ。




「いつまで実習?」




『もう二週間が経った頃なので、あと二週間です。』




受け答えもすっかり大人。




「そのあとはどうするの?」




『この病院に来るつもりです。』




「そう!仲間が増えてうれしい!」




『ねぇ、彼女の実習終わりに、三人でご飯に行かない?




そうそう、直子ちゃんも呼んで。』




そう言い出したのは、女子会大好きなまい。





「いいねいいね!!良子ちゃんはどう?」




『行きたいです!!



あ、アルコールはまだ禁止されていて飲んだことはないけど・・・』




あ、そうだった、まだ完治ではなかったね。




4人での女子会は二週間後に行くことに決めた。




そんな話をしていると、




『何やら楽しそうな話をしているな。』




と入って来たのは、幸治さん。





『「ひゃっ!!」』




そういったのは私だけでなくて、隣にいた良子ちゃんも。





『あれから看護学校がここから離れているという理由で、紹介状を書いたけど…この病院から違う病院に行ったはずなのに、そこには全く行ってなかったみたいだな。




それなのに、よくここに来れたなぁ?』





と低いトーンの幸治さんに、私までもドキドキしてうつむいた。




気づくともうまいはいない・・・。噓でしょ!?





『ぇっと・・・その・・・町のクリニックには行ってまして・・・




でも、そこは看護学校卒業とともに、こちらのクリニックに変えよう「この病院にしなさい!!」





そういわれ『はい・・・』




と小さくつぶやく良子ちゃんに、私までもがしゅんとなってしまった。




『そしたら看護学校卒業後にすぐにこちらに来るように。紹介状はいらないから、俺のところに電話すること。




その連絡がない場合、ここでの勤務の日にはこちらから健診に来るけどいいな?かなも、彼女が来なかったら、一緒に健診な』





「えっ!!!!それは違うんじゃないですか?私は関係『関係あるぞ。お前の勧めで彼女は看護師を目指したんだろ?』






そうだった・・・





「はい・・・大丈夫だよね・・?良子ちゃん?」




隣の彼女は『は、はい・・・』と再び小さな声で不安そうに答えた。




良子ちゃん、幸治さんの診察を受けに来る気、ない・・・?




と若干も思いながら二人で叱られた感じとなって、幸治さんは立ち去った。