柔らかくて、なで触り心地の良い瑠衣くんの髪に一目惚れしてしまった海月は無言で髪をなで続けた。



 ときどき、くすぐったそうに身をよじる瑠衣くんがとっても可愛い。



「ふふっ可愛い~」



 髪を触りながらその可愛さに口元が緩んでふにゃりと笑う。



 つい数十分前なら到底考えられなかった瑠衣くんの表情だ。というか、あの歩く銅像・氷の王子様にこんな顔があるなんて知らなかった。



 普段の海月が知っている瑠衣くんは目が死んでいるなどではなくフツーに常に無表情で無頓着というか・・・・・・とりあえずすべてのものに無だ。



 最近では無の貴公子と呼ばれているほどに。たぶん言葉の使い方を間違っているとおもうけど。



 さっき見たあの表情は登校してくるときも、廊下を歩いている横顔も、今まで海月が見てきた・・・・・・というよりさーちゃんから聞いた瑠衣くんの人物像とはあまりにもかけ離れている。



 誰かに優しくしゃべりかけている場面なんかも見たことはなかったし、なんなら目がつぶれそうになるほど眩しい笑顔も一度も見たことなかった。・・・・・・・・・というか、女子と話しているところなんて。



 瑠衣くんが激しい女嫌いだということは有名な話だ。中学のころからなったらしく、近づいてきた女子はすべて拒否。噂だが前に突撃で告白をした女子を謹慎処分にしたとらしい。