サリーシャは結ってもらった髪を見せるように少し後ろを向いた。先ほどの食事のときは下ろしていた髪の毛は、幾つかに分けて結い上げ、薄茶色のリボンを飾った。
「とても似合っている。きみはいつも可愛らしいが、今の髪型でもやはり可愛い」
「っ! ありがとうございます」
セシリオの誉め言葉は相変わらず、飾らずにストレートだ。ヘーゼル色の瞳でまっすぐに見つめられて微笑まれ、サリーシャはほんのりと頬を赤く染めた。きっと、本気でそう思ってくれているのだろう。そのまま瞳から目を離せずに見つめ合っていると、パンパンと手を叩く音がしてサリーシャはハッとした。
「さあさあ、旦那様。馬車の準備が出来ておりますよ。さっさと出掛けて来てください。朝っぱらからこんなところでイチャイチャされると使用人達の目の毒です。体が大きいから存在感がありすぎるんですよ」
タウンハウスの家令──ジョルジュが迷惑そうに外を指差す。セシリオは心外といった様子でジョルジュを見返した。
「イチャイチャなどしていない。いつもの通りだ」
「ははぁ、なるほど。いつもイチャイチャされているわけですね。遅咲きの春で浮かれるのは分かりますが、アハマスの屋敷の使用人達の気苦労が伺い知れます。わたしなんか、今すぐに妻の顔が見たくなりました」
「おまえの妻なら上にいるだろう? 見に行けばいい」
ジョルジュの妻はこのタウンハウスで働く女中だ。上を指して眉をひそめるセシリオに対し、ジョルジュは半ば呆れ顔でため息をついた。
「そういうことではありません。さあ、行ってらっしゃいませ」
最後は半ば強引に馬車に押し込められた。アハマス家のタウンハウスは中心地に程近い高級住宅地にあるので、目的の中心街までは馬車ですぐだ。閑静な屋敷街を抜けて五分ほどで、セシリオとサリーシャは馬車を降り立った。
「とても似合っている。きみはいつも可愛らしいが、今の髪型でもやはり可愛い」
「っ! ありがとうございます」
セシリオの誉め言葉は相変わらず、飾らずにストレートだ。ヘーゼル色の瞳でまっすぐに見つめられて微笑まれ、サリーシャはほんのりと頬を赤く染めた。きっと、本気でそう思ってくれているのだろう。そのまま瞳から目を離せずに見つめ合っていると、パンパンと手を叩く音がしてサリーシャはハッとした。
「さあさあ、旦那様。馬車の準備が出来ておりますよ。さっさと出掛けて来てください。朝っぱらからこんなところでイチャイチャされると使用人達の目の毒です。体が大きいから存在感がありすぎるんですよ」
タウンハウスの家令──ジョルジュが迷惑そうに外を指差す。セシリオは心外といった様子でジョルジュを見返した。
「イチャイチャなどしていない。いつもの通りだ」
「ははぁ、なるほど。いつもイチャイチャされているわけですね。遅咲きの春で浮かれるのは分かりますが、アハマスの屋敷の使用人達の気苦労が伺い知れます。わたしなんか、今すぐに妻の顔が見たくなりました」
「おまえの妻なら上にいるだろう? 見に行けばいい」
ジョルジュの妻はこのタウンハウスで働く女中だ。上を指して眉をひそめるセシリオに対し、ジョルジュは半ば呆れ顔でため息をついた。
「そういうことではありません。さあ、行ってらっしゃいませ」
最後は半ば強引に馬車に押し込められた。アハマス家のタウンハウスは中心地に程近い高級住宅地にあるので、目的の中心街までは馬車ですぐだ。閑静な屋敷街を抜けて五分ほどで、セシリオとサリーシャは馬車を降り立った。



