辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


「じゃあ、おじさんが鬼ごっこの鬼して」

 子ども達はサリーシャの護衛をしていた男性にまで声を掛ける。『おじさん』と呼ばれたまだ二十代半ばの兵士は苦々しげに口元を引き攣らせた。

「みんな、待ちなさい! 奥様はお一人しかいないのですよ。いい子に出来ないと、奥様特製のクッキーはお預けですよ」

 アンが大きな声を上げてクッキーを見せると、わぁっと子ども達から歓声が上がる。その笑顔を見て、サリーシャは料理人さん達に手伝って貰って作ってよかったと、口元を綻ばせた。