アンは籠の中を覗きこむと目を丸くした。籠の中には子供達全員に行き渡る量のクッキーが入っている。
「こんなに沢山。作るのが大変だったのではありませんか?」
「大変どころか、楽しかったわ。実は、お屋敷の料理人の方々にも手伝って貰ったの。だから、味は保証するわ」
サリーシャはペロリと舌を出す。アハマスの領主館で腕を振るう料理人達は、皆がアハマスでトップクラスの料理人達だ。だから、そんな彼らの指導のもとで作ったこのクッキーの味の良さは折り紙付きなのだ。
しばらくアンに最近の様子などを聞きながらお喋りをしていると、サリーシャが来たことに気が付いた子供たちが続々と集まってきた。
「奥様、遊ぼう!」
「ねえ、本を読んで」
「駄目だよ。私、縫物を教えてもらいたいんだから」
「お庭にお山を作ったから見に来て!」
次々と子ども達がサリーシャに話しかけては手を引こうとする。全員が全員、違うことを言うから大変だ。



