辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


 その日の午後、サリーシャは早速クッキーを持って孤児院へ慰問に出かけた。
 カタカタと馬車に揺られること三十分。目的地に到着して馬車の扉を開けると、楽しそうな歓声が聞こえてきた。きゃあきゃあとはしゃぐような、子供の声だ。足元に気を付けながら地面に降りると、サリーシャは持っていた籠を持ち直した。
 雨のぬかるみを踏まないように気を付けながら建物の入り口に近づくと、ドアについた金具でトントンと木を叩く。しばらくするとギギギっと音を立ててドアが開き、中年の女性が顔を出した。

「ご機嫌よう、アン先生」
「ようこそいらっしゃいました、奥様」

 扉を開けた中年の女性──この孤児院の施設長をしているアンは、笑顔でサリーシャを迎えた。ドアを抑えるように立つと、サリーシャを中へと招き入れる。

「皆様お変わりはない?」
「はい」

 笑顔でそう頷くアンに、サリーシャは籠を差し出した。

「これ、先日子供たちに貰った木の実で作ったの。お口に合うか分からないけれど、よかったらどうぞ」
「まあ、奥様が? ありがとうございます。子供達も喜びますわ」