サリーシャは笑って料理人達を座らせると、さっさと紅茶の用意を始める。美味しく紅茶を淹れるレッスンはマオーニ伯爵邸に居たときに定期的に習った。紅茶を美味しく淹れられることはお茶会でフィリップ殿下の心を掴むために重要なスキルだと見なされていたからだ。
お湯を沸かして熱々のお湯を高い位置から茶葉に注ぎ、蓋をして蒸らすこと砂時計できっかり三分、琥珀色に染まった液体を白い器に順番に注いでゆく。カップからはほんのりと湯気が上り、空気の振動から僅かに揺れていた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「恐縮にございます」
屋敷の女主人の手ずからの紅茶に、屋敷の料理人達は皆恐縮したようにペコリと頭を下げる。その様子を見て、サリーシャは苦笑した。
「今日はわたくしが皆様に手伝って貰ったのだから、そのお礼です。どうか気を楽に接して欲しいのです」
それでも顔を見合わせて無言のアイコンタクトをとる料理人達に、サリーシャは眉尻を下げた。
「そんなふうに恐縮されてしまうのは、寂しいわ。皆様はわたくしの先生ですのに」



