辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


 厨房の料理人は覗き込むサリーシャが火傷をしないようにと一歩下がらせると、ガダンとオーブンの蓋を開けた。むわっとする熱気と先ほどとは比べ物にならないほどの甘い香りが一気に広がる。

「調度よい具合に焼けていますよ。少し冷ましましょう」

 にっこりと料理人に微笑まれ、サリーシャはこわごわと鉄板の上の物を見た。丸く平べったい生地に刻んだ木の実を混ぜ込んだクッキーは、こんがりときつね色に色付いている。

 このクッキーに入れた木の実は、先日孤児院を訪問した際に子供達からプレゼントされたものだ。皆で近所の林で食べられる木の実を集めたのだと言っていた。
 サリーシャはせっかくなので、次回訪問する際には貰った木の実をクッキーにしてお土産に持っていこうと考えた。木の実のクッキーはお菓子としてよくある商品だが、砂糖が贅沢品なので、平民はそうそう食べられるものでもないからだ。
 とは言ってもサリーシャはクッキーなど作ったこともないので、こうして屋敷の料理人に教えてもらった。そのクッキーが上手く焼けているのを見て、サリーシャは表情を綻ばせた。

「本当だわ。ありがとう! わたくし、これを冷ましている間に紅茶を淹れるわ。みんなで一緒に、少し頂きましょう」
「奥様は休んでいて下さい。わたし達がやりますから」
「いいのよ。クッキー作りを手伝って貰ったお礼よ。それにわたくし、紅茶を淹れるのは得意なのよ?」