辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

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 貴族の当主の妻には様々な役割がある。それは領地内の福祉活動であったり、社交であったり、視察であったり、当主へ仕える者たちへの労いであったりする。サリーシャも結婚してから、まだほんの少しではあるものの、辺境伯夫人としての役割を担い始めた。

 そんなサリーシャが新婚早々セシリオから任された仕事の一つに、領地内の支援施設や病院、孤児院などの慰問活動がある。アハマスに来たばかりの頃、セシリオに連れられて一度支援施設の慰問には行ったが、これからはサリーシャが自発的に各施設を回って困っていることや問題がないかを聞かなければならない。
 忙しいセシリオの役に立ちたいので沢山お仕事をしたいと気は()くのだが、セシリオは徐々に覚えていけばよいと言ってくれている。だから、サリーシャは与えられたこの仕事に、自分なりに一生懸命取り組んでいた。


 オーブンの中から部屋全体を覆い尽くすようなあまーい香りが漂ってくるのを感じ、待ちきれなくなったサリーシャは黒い鉄製の扉の前に、吸い寄せられるように近付いた。

「上手く出来たかしら?」
「奥様、少しお待ちくださいませ。危ないですよ」
「あら、ごめんなさい」