辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

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 アハマスの領主館の、サリーシャ達が暮らす居住棟の一階にはとても大きな大広間がある。舞踏会なども行える広さを備えたそこで、二人の披露宴は行われることになっていた。

「わたくし、あの大広間は入ったことがありませんわ」

 サリーシャはそのことをセシリオから聞いた時、そんな台詞をこぼした。それに対し、セシリオから返ってきたのは予想外の答えだ。

「俺も、殆んど入ったことがない」
「閣下も?」

 サリーシャはきょとんとして聞き返す。生まれたときからここに住み、この屋敷の主であるセシリオが殆ど入ったことがないとはどういうことなのか。

「かつてはあそこで、アハマスの各地域を治める長官達や周辺の諸侯を招待して社交パーティーを開いたりしていたようなのだが、長い間女主人がいなかったから……」

 それを聞いてサリーシャは「あぁ」と納得した。社交パーティーやお茶会の企画は、通常女主人が取り仕切る。サリーシャが引き取られたマオーニ伯爵邸でも時々社交パーティーやお茶会が行われていたが、それはいつも義理の母が取り仕切っていた。
 以前クラーラから、セシリオの母はセシリオを出産して程なくして儚い人となったと聞いた。そのため、アハマスでは女主人が不在で長らくあの部屋も使われることもなかったのだろう。