辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


 オーバン氏に促され、サリーシャは一歩足を踏み出した。
 まっすぐに続く祭壇までの道には真新しい赤い絨毯が敷かれている。敷きたての絨毯の柔らかな感触が足から伝わり、まるでふわふわと浮いているような気がした。距離が近くなると、セシリオがまっすぐにこちらを見つめているのが分かった。ベール越しに目が合うと、ヘーゼル色の瞳が優しく細まる。

 目の前まで到着するとセシリオが手を差し出し、サリーシャはそっとそこに手を重ねた。大きな手は、いつかのようにサリーシャの手を包み込むようにぐっと握りしめた。

「とても綺麗だ。その……上手く言えないが、本当に綺麗だ」

 少しだけ目元を赤くしたセシリオに、サリーシャにしか聞こえないような小さな声で囁かれた。飾り気のないセシリオの『綺麗だ』という言葉はとても心に響く。
 祭壇に向かって二人で並んで立つと、司教が開式の辞を述べ始めた。この光景も、司教の紡ぐ言葉も、一連の流れが全て夢の中での出来事のような気がする。けれど、横に立つセシリオへの想いと、彼が注いでくれる愛情だけは真実であると確信できる。

「今ここに、二人が夫婦となったことを宣言します」

 しばらくして司教が一際大きな声を上げると、参列していた人々が一斉に立ち上がり、拍手が沸き起こった。

「おめでとうございます」
「おめでとうございます」