サリーシャもつられて涙ぐむ。本当に、なんと自分は果報者なのだろう。大好きな人に嫁げることも、こんなふうに自分を心配してくれる人が身近にいることも。
「わたくし、幸せになるわ。だから、これが終わったらノーラの番ね」
「……わたくし?」
手を握り返すと、ノーラは途端に戸惑ったような表情を浮かべる。サリーシャはそんなノーラの様子を見て微笑んだ。
ノーラはサリーシャの六歳年上の二十四才だ。美しさの盛りにあたる。今までサリーシャに尽くしてくれてそんな話はなかったが、優しいノーラに素敵な人が現れないはずがない。きっと近い将来、素敵な話が聞けるとサリーシャは確信している。
そうこうするうちにトントンとドアをノックする音がして、心配そうな表情を浮かべたクラーラが顔を出した。きっと、サリーシャがなかなか出てこないので待ちくたびれたのだろう。
「サリーシャ様。ご準備は?」
「出来ているわ。今行きます」
サリーシャが立ち上がると、まわりに控えていた侍女達がサリーシャのドレスのロングトレーンを少し持ち上げて、歩くのを手伝ってくれた。いつも以上にずっしりとしたドレスは、まわりの人達が端正込めて手を掛けてくれた証し。ちっとも重くはなかった。
ドアを出ると、クラーラの旦那様──オーバン氏が柔らかい笑みを浮かべて佇んでいた。サリーシャは少しだけ頭を下げて会釈をする。



