辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


「本当に、ようございました。サリーシャ様が幸せそうにしていらして。──あんな事件があったから、ずっと、どうなるかと思っておりましたの」
「ノーラ……」

 泣き顔で微笑むノーラを見て、サリーシャは言葉に詰まる。同時に、どんなに自分が心配されていたのかを悟った。

 ノーラは、サリーシャが養女として引き取られたのとちょうど時を同じくして、マオーニ伯爵家でサリーシャ付きの侍女として奉公し始めた。当時十歳だったサリーシャに対し、ノーラは成人したばかりの十六歳。二人の立場は違えども、その時からずっと一緒だった。

 田舎娘だったサリーシャが家庭教師から叱責されて落ち込んでいたときも、ホームシックになって泣いていたときも、フィリップ殿下の有力婚約者として仮面を被り出したときも、いつも隣にいた。そして、大怪我したサリーシャの世話を献身的にしてくれたのも、老人伯爵に嫁がされると知り絶望に染まるサリーシャを励ましてくれたのも、ノーラだった。

「アハマスに来る途中の馬車の中でのサリーシャ様の塞ぎ込んだ様子がずっと頭に残っておりました。だから、ずっと心配だったのです。でも、今のサリーシャ様は本当にお幸せそうですわ」

 サリーシャの手を取ると、ノーラはまっすぐにこちらを見つめて微笑んだ。

「おめでとうございます。サリーシャ様」
「──ありがとう。ありがとう、ノーラ。わたくし、とても幸せ者だわ」