その日屋敷に戻ったサリーシャは、夕食の席でセシリオの顔を見つけると開口一番にドレスの話をした。嬉しすぎて、早く話したくてたまらなかったのだ。

「閣下、ウェディングドレスが出来上がりましたのよ」

 サリーシャは目を輝かせて身を乗り出した。夕食の配膳を待ちながら大喜びではしゃぐサリーシャを見つめ、セシリオは柔らかく目尻を下げた。

「それはよかった。──その……、きみの満足出来る一品に仕上がったか?」
「はい! とても素晴らしいんですの。閣下にお見せするのが本当に楽しみですわ」

 そう言ったとき、明らかにセシリオがホッとした表情をしたのをサリーシャは見逃さなかった。思ったとおり、セシリオはドレスの出来栄えに、並々ならぬこだわりがあるようだ。あのシンプルなドレスのままにしておかなくて本当によかった。

「きっと、閣下も気に入って下さると思います」
「ああ、そうだろうな。きみが俺のために着るんだ。気に入らないわけがない」

 朗らかに微笑まれ、サリーシャはほんのりと頬を染めた。さらりとそんなことを言ってくるなんて。しかも、セシリオの場合は女性がキュンとくる台詞を意図的に選んでいるわけではなく、素で言っているのだから(たち)が悪い。