セシリオの申し出に、サリーシャは驚くとともにとても嬉しく思った。結婚記念にアハマス家に伝わる女主人の指輪は貰う予定だが、それはアハマス家のものであり、二人で選んだものではない。

「わたくし、懐中時計がいいです。その……、いつも身に付けておけるから」

 それを聞いたセシリオは優しく目を細める。

「では、選びに行こう。王都の方が品ぞろえがいい」
「はい」

 二人は並んで歩き始める。どちらともなく触れ合った手は、自然に絡み合って固く握られた。

 サリーシャとセシリオはその足で向かった王都で一番の時計店で、最新式の手巻きの機械式懐中時計を購入した。金製で、同じく金のチェーンが付いている。宝石がついたアクセサリーよりもよっぽど高価な品だ。

「一日一回以上、ここを巻いてください。あと、定期的に点検に出してくださいね。きちんとメンテンスすれば、一生使えますよ」