「可愛いでしょう?」
「たしかに可愛いな」
セシリオが小さく頷く。そして、サリーシャのことを見下ろしてクスリと笑った。
「目を輝かせて見入るきみも可愛かった」
サリーシャは軽く目を見開くと、頬を赤く染めた。
「子供っぽいと思われましたか?」
「いや? 単純に可愛らしいと思っただけだ」
「あんな風に王宮の大広間で閣下とダンスを踊るのが楽しみです」
「ダンスか……。善処しよう」
ダンスの話になった途端に苦虫を噛み潰したような表情になったセシリオを見上げ、サリーシャはふふっと笑う。どうやら、本当に苦手意識があるらしい。でも、ダンスが上手かろうと下手であろうと、サリーシャにとって大事なのは踊る相手がセシリオであるということだけなのだ。アハマスに戻ったら、一緒にダンスの練習しよう。その時間も楽しみだ。
時計塔を見上げたセシリオは何かを考えるように顎に手を添える。
「今思いついたんだが、記念に時計を買おうか?」
「記念?」
「ああ。結婚の記念に──」