クッキーを作るための材料やら道具を狭いアパートの台所にどうにか準備を済ませてから、居間の方に向かう。
二人の様子を窺うべくそろりと近づいていくと、こたつに並ぶ背中が目に入った。どっちも大事で、後ろから抱き締めたいなって、頭の中がクリスマスですっかり浮かれているのかあほなことを思った。
こたつの天板にはクレヨンが転がっているのがちらりと見えて、よく見ると心美の右手にもクレヨンが握られている。仁愛はそれを、微笑ましそうに見つめて寄り添っていた。
「……はいっ、できた! これ、お姉ちゃんへのクリスマスプレゼントね!」
「ありがとう、心美ちゃん。すごく素敵だよ! 大事にするね」
描いていた絵が完成したのだろう。心美が自信作と言わんばかりの表情で、仁愛に向かって画用紙を差し出している。
俺がいる位置からは微妙に見にくい角度で持っているから、なにが描かれているのかまではわからない。だけど仁愛が困ったような顔にはなっていないから、たぶんそんな理解不能な絵ではないと思う。それに兄ばかかもしれないけど、心美の絵は結構上手だから、きっとプレゼントと呼べるほどのものは描けているに違いない。
心美がいきなり仁愛に会いたいと言い出したときはどうなるかと思ったけど、仲良くできているみたいでよかった。心美は可愛らしいものが好きな子だし、兄じゃなくて姉と呼べるような女の子とも親しくなりたい憧れがあったのかもしれないな。
……つうか心美、まさか俺の気持ちを仁愛に言ったりしてないよな?
心美には俺の恋心がばれているのに、口止めするのを忘れてしまっているのを思い出した。


