「ねえ、このお姉ちゃんに会いたい!」
「え?」
「そうだ! 明日一緒にクリスマスパーティーしようよ!」
「……はい?」
我が家の小さなお姫様は、とんでもないことを突拍子に言い出した。なにがどうなってそういう流れになるのか俺にはさっぱりだけど、俺は心底心美に感謝すべきなのかもしれない。
だってクリスマス当日、二人きりで一緒に遊びには行けなくなってしまったけれど、俺の家に仁愛を招いて一緒に過ごせることになったのだから。
心美考案のクリスマスパーティーを提案したとき、俺は断られるかもしれないとびくびくしていた。そもそも仁愛が立ててくれていたクリスマスの計画とは違ってしまっているし、心美の面倒を見ながらという条件がくっついてしまっている。二人きりで遊ぶのとはわけが違う。
だから断られても仕方ないと半ば諦めを抱いて、いい返事なんて期待しないようにしていたけれど、仁愛は二つ返事で快諾してくれた。
誘ってくれて嬉しいと笑ってくれた仁愛がとても可愛くて最高だったけど、クリスマスパーティーをしようと思いついたのは心美だから、なんだか自分が情けなくなったりもした。
なんで俺は仁愛に喜んでもらう方法を自分で考えれなかったんだよ……。
しかも今、仁愛を一人占めしているのは心美だった。心美は初めて対面した仁愛をすごく気に入った様子で、懐き具合が半端ない。
今なんて心美が仁愛を居間に連れていってしまい、俺は一人寂しく台所でクッキー作りの準備を整えている最中だ。これも心美の要望で、仁愛と一緒にお菓子作りをしたいとのことらしい。
普段お菓子作りなんて俺も母ちゃんもしないから、クリスマスみたいなイベントの日ぐらいしても構わないけど、準備は完全に俺任せらしい。
仁愛と遊びたいのは俺だって同じなのに……心美に嫉妬してしまいそうだ。


