クリスマスの日に遊ぼうと誘ったのはあたしだった。龍太の家庭事情はわかっていたけど、もしかしたら予定を開けてくれるかもと一縷の望みをかけて、一世一代の勇気を振り絞った末に結ばれた約束だった。
でも、それがなくなってしまった今のあたしには、もう一度誘う気力は残っていない。
龍太が妹さんを優先する理由はわかりきっているのに、また優先してもらえなかったら……と不安がどうしても膨らんでしまう。
だから次の約束を自分からは持ちかけられず、龍太の都合に任せるようなことしか言えなかった。
それにもうね、十分だよ。
今日は会う約束をしていなかったのに、こうやって今、あたしに会いに来てくれたんだから。
これが龍太なりの誠意だってわかるから。
「……あのさ、一つ提案があるんだけど」
諦めの気持ちをどうにか消化しようとするあたしに、龍太はあることを持ちかけてきた。
龍太の背後では、暗くなった空に一番輝く星が瞬いていた。
***
気になる女の子ができた。
それはなんだか久しぶりのことで、宝物を見つけたみたいに毎日胸の奥がそわそわしている。
そんな俺の心の内を当てたのは、俺よりも一回り年下の妹だった。
「お兄ちゃん、このお姉ちゃんのこと好きなの?」
妹の心美からの問いかけに、俺は持っていたスマホを落としそうになった。いきなりなにを言い出すんだこの子は。
心美は俺のスマホの中の写真を熱心に覗き込んでいる。
俺が居間のこたつに潜り込んでスマホで見ていたのは、夏にバイト仲間やら友達やらその知人やら、とにかくいろんな繋がりで集まった人たちと川辺でバーベキューをした日の写真だ。
この日出会った一つ年下の仁愛に、俺は一目惚れしていた。そしてその日のうちに連絡先の交換に成功し、今では二人きりで遊ぶ仲になった。


