「そうなんだよ、ごめんな。明日、母ちゃんの仕事のシフトが急に変わったから、家に妹を一人で置いとくわけにはいかなくなっちまったんだ」

「……そっか」


 眉尻を下げながら龍太はメッセージには書いていなかったことを説明してくれた。その口振りが本当に申し訳なさそうだから、こっちがとても謝らなければいけないと思った。子供じみたことを思ってごめんって。

 龍太には一回(ひとまわ)り歳の離れた6歳の妹さんがいる。母子家庭だから妹さんの面倒を龍太と龍太のお母さんで協力しながら見ているらしくて、二人がいないときにまだ幼い妹さんを一人で留守番させるのは心配だから、必ず片方が家にいるようにしている。これは、前に聞いたこと。

 本当なら明日はお母さんが休みで、龍太はあたしと出かけるための時間を作ってくれていたらしいけど、それが急遽困難になってしまったらしい。

 事情を聞けば致し方ないってわかる。龍太が妹思いのお兄ちゃんだってことは、前々から妹さんの話をしてくれる龍太の様子から十分感じ取っているから。

 自分のことはなんでも適当に済ませがちだけど、大事な人はとことん大事にする。そういう優しい一面も、あたしはいいなぁって思っていた。この人の大事な人にあたしも選んでもらいたいなぁって、思わず願っちゃうほどに。

 まあ、今の龍太の大事な人は妹さんとお母さんだから、あたしなんかは全然敵いそうにないんだけど、昔から優先されたい願望があるあたしはちょっとだけ嫉妬してしまうよ。

 だってあたしにとっての大事な人の中に……龍太は入っているから。同じように思われたいって、思っちゃうよ。


「留守番させるのも心配だし、なによりクリスマスに妹さんを一人きりになんてなんだか寂しいもんね。遊ぶのはいつだってできるし、またよかったら誘ってね」


 精一杯、自分の気持ちを押し殺して言った。