いつも外で龍太と会うときはカイロ代わりに買って持っていたけど、もしかして覚えてくれていたんだろうか。
 些細なことだけど興味を持ってもらえていたのが嬉しくて、頬がゆるゆると緩んでいく。だけどそれを素直に見せるのもなんだか恥ずかしくて、マフラーの中でこっそり嬉しさを噛み締めた。


「……ありがと。あったかい」

「俺が愛情込めて温めておいたからな」

「またあほなこと言ってる。買ったばかりだからに決まってるじゃん」

「そこは龍太の愛ってあったかいねって可愛く言うところだろ~。かわいくねー」

「別に、可愛くなくて結構ですー」


 自分の態度がよろしくないのは承知の上だけど、ついついむすっとして唇を尖らせてしまう。

 ほんとあたし、可愛くないや。

 日が落ちるとともに冷えてきた指先をペットボトルのぬくもりで温めながら、無性に人肌が恋しくなった。龍太とは手を繋げない関係にやきもきしてしまう。


「……なあ、明日の約束が無理になったの怒ってる?」


 頭の中で考えがぐるぐる回るうちに黙りこんでしまったあたしに、龍太は恐る恐るといった感じで尋ねてきた。

 そういえばあたし、既読スルーしたままだったな。


「怒ってない……とは言い切れない、けど……。妹さんの、ためなんでしょ?」


 もともと、明日の約束は状況によっては急になくなるかもしれないと伝えられていた。それを理解した上での約束だったのだから、勝手に不機嫌になっているあたしが悪い。

 ……でも、しょうがないじゃん。一緒に過ごしたいと思っている龍太とクリスマスに遊べるのを楽しみにしいたから、どうしても残念に思っちゃうんだよ。