……いやいやいや、ダメだあたし。よく考えるんだ。一方的に期待してから違ったなんてパターン、一番最悪なんだから。
だけど……。
『学校にいる』
大して時間を置かずに、素直に現在地を教えていた。相手はトークルームを開いたままだったのか、送ったそばからメッセージに既読マークがつく。
『わかった。迎えに行くから校門の前にいて』
「外寒いんだから、何分で着くか言ってよね。こっちはあんたがどこにいるのか知らないんだから」
可愛いげのない文句がついつい口から飛び出すものの、それはメッセージに打つことなく、代わりに頷いている仕草のネコのスタンプを送っておいた。
そしてコートとマフラーを身に着けて身支度を整えると、カバンを持って早々に校門に向かった。
*
友達の友達の、バイト先の先輩……だったかな。
他校に通う龍太とは、そんな紹介みたいな形で知り合った。
今まで付き合ったり好きになったのは落ち着いて余裕のある人ばかりだったけど、龍太は少しタイプが違う。
悪く言うとルーズ……なのかもしれないけど、気の向くままにのらりくらりとしているところは、なんだか伸び伸び生きているように感じて新鮮だった。たぶん、自分にはないそういう部分を魅力に感じている。
まあ、時々掴み所がなくてどう関わったらいいのか戸惑ったりするけれど。
そんな龍太が自転車に乗って現れたのは、あたしが校門についてすぐのことだった。いつもは約束していても遅刻の常習犯だから、連絡してから案外早い到着にびっくりする。
「ん、これやるよ。さっきコンビニで買ってきたから」
会うなり早々に、龍太はダウンジャケットのポケットから取り出したものをあたしに向かって投げてきた。落としそうになりながら受け取ったそれは、あたしがよく飲んでいる小さいペットボトルのホットカフェオレだった。


