特に理由とかは送られてきたメッセージに書かれていなかったけれど、あたしより優先したいことがあるのだろう。
 それは、わかってる。でも、あたしだって優先されたい気持ちがないわけじゃないんだ。

 いつだってそうだった。あたしはなにかと、一番に選んでもらえない。

 家族とは不仲とまではいかないし友達だって多いのに、あたしが一緒にいてほしいと思う肝心なときほどそばに人がいてくれない。寂しさだけが、あたしの一番近くにいた。





 なにをする気もどこに行く気も起きないまま教室でぼんやり過ごしているうちに、窓の外の空が徐々に暮れて夜の準備を始めた。

 ぼーっとしてるだけで何時間も過ごすなんて、我ながらすごい暇潰しだな自嘲する。まあ、一人で過ごすのに慣れてるから成せる技なのかもしれない。

 イルミネーションで賑わう街並みを抜けて帰るとなると余計に気分が滅入りそうだから、さすがに完全に暗くなる前に帰宅しようと、すっかり相棒になってくれていた自席から立った。ずっと座っていたからお尻が痛いし体も凝り固まっている。

 ぐっと体を伸ばしてからカバンを持とうとしたところで、久しぶりにスマホが通知音を鳴らした。
 期待なんてとっくに捨てたはずなのに、少しドキドキしながら確認する。表示されていたのは、あのクマのスタンプ男子の名前。


『仁愛、今家にいる?』


 どういう意図だろう。数時間前にいきなり、明日は無理であると連絡してきたきりだったのに。しかもあたしはそれを既読スルーしてるっていうのに。

 まさか、明日の埋め合わせを今日しようってこと? こっちの予定も確認せずに?

 送られてきた短いメッセージからあれこれ考えを巡らせる。いろいろ思うことはあるのに、もしかしてとわくわくし始める心を落ち着かせられらない。