月の砂漠でプロポーズ

「……」

 街を見渡す諒さんをこっそり見る。
 彼の目は、愛おしいような憧れのような。
 この町が、国が人が抱える問題を見通そうとしているかのような。

 諒さんは旅が好きというか、自分を取り巻く世界を愛しているのだろう。

 不意に彼が私の目を見て、ニッとわらった。

「スークは値切るのが基本だぞ」
「お任せあれ」

 私はどんと胸を張って見せたのだった。

 一時間後。
 私は目の周りをマッサージしていた。
 その腕には金でできた繊細なレースのようなブレスレット。
 指には同じ意匠で金の指輪か嵌められていた。

「諒さんは悪徳販売者ですかっ!」

「プレゼントを買っただけなのに心外な。大体、スークが扱う金の総重量は十トンとか言われている。俺が少しばかり買ったって問題ない」

 諒さんのふふんという顔がにくたらしい。

「そういう問題じゃないでしょう。ボーナスでも太っ腹過ぎます!」

「俺の腹は出ていない」

 ムッとしている。子供か!

「……こんなにもらえる理由ないです……」

「いずれ取り立てる」

「望むところです!」

 貴方の要求が、私が考えているものだといい。

 沈黙にならないうちに諒さんが口を開いた。

「令嬢が帰ってしまったから、ヴァカンスのみになった。慌てる旅じゃなくなったから、のんびりとしよう」

 ニッといい笑顔だったから私もサムズアップを返した。