月の砂漠でプロポーズ

 まずはブルジュ・ハリファ。
 ドバイを象徴する世界一の高さを誇る高層ビルだ。
 遠くからでも、その威容は見える。

「高さ八百二十八メートルとかすごくないですか?」
「ああ」

 東京タワーの約三倍、スカイツリーですら二百メートルくらい低い。

 千メートル近い建物が横ではなく、縦に天に向かって立っているのだ。

 ピラミッドをみたときも、あまりの大きさになんといっていいかわからなくなった。
 今回もそうなる気がする。

 建物の足許についた。遠近法が狂うな。

「おおおお……」

 お行儀悪く、シートに寝そべる。そうか、こんなことをする客の為のルーフトップなのかな。

「二百六階建てなんて信じられない……エレベーターで何分くらいかかるんだろう」

「昇ってみるか?」

「展望台があるんですよね」

「ああ。百二十四階だそうだ。展望台までのノンストップエレベーターは世界最速らしい」

「なるほど」

 ドバイノートに書きつける。

「世界一の高さにある『アット・ザ・トップ・スカイ』を予約しておいた」

「うおっ! すごいですね! 出発が急だったのに、どんな裏技を使ったんですか?」

 予約制で有名だから、逆説的だけど予約をしようとも考えていなかった。
 渡会さんじゃなかった、諒さんはにっこりと笑うのみ。
 はい、訊かぬ存ぜぬ、見ざる言わざるですね。
 うん、楽しみにしていよう。それにしても、持ってきたワンピースで数が足りるかな。