専用のラウンジに通され、いくらも待たずに機内へと案内される。

 ……諒さんはいない。

 断るとはいえ、令嬢の相手をしているんだろう。
 いやだなあ。
 ということは別便だろうか。
 令嬢と諒さん、十時間も一緒?
 もやもやもや。

 プン、という独特のアナウンス前触れ音が入った。

「皆さま、今日も××航空五〇四便、ドバイ行をご利用くださいましてありがとうございます……」

 いよいよだ。
 考えてみたら、旅行するのは八カ月ぶりくらい? 私にしては頑張ったものである。

「……まもなく出発いたします。それでは、ごゆっくりおくつろぎください」

 アナウンスが終わると、お腹に響くような重低音が聞こえてきた。
 わくわくわく。

「失礼」

 空いていた窓際の席の人が到着したようだ。足を伸ばしてリラックスしていた。

「すみませ」

 言いながら、足をひっこみかけて固まった。
 諒さん!