月の砂漠でプロポーズ

「確か、林が騙った元同級生の方達から弁護を頼まれてませんでした?」

「元々、俺は刑事担当ではなくてね。私文書偽造と詐称については明白だから、その道の弁護士に任せたほうがいいと断ってある」

 そうだったんだ。

「それと、也実とここまで深い付き合いをしているから、裁判に私情を持ち込んだととられかねない」

 え?
 渡会さんの深い、底知れぬ瞳に圧倒されてしまう。

「也実を自宅に住まわせて、アシスタントとして働かせている」

 ………………そりゃ、深いわ。

「林からも弁護を頼まれたしね」
「ええっ」

 図々しいな!

 渡会さんは頷いた。

「林にしてみれば、今回の事件に関して同級生の中で俺だけが被害者じゃない。要するに奴と俺との間に利害関係は存在していないんだ」

 たしかに。

「『おまえは高校のときに俺に優しくしてくれた。頼む、同級生の誼で俺の弁護をしてほしい!』と言われたが、断ったんだ」

 渡会さんは複雑な表情だった。