月の砂漠でプロポーズ

「あー、久しぶりで家の中ほこりだらけだろうなあ。カビてないといいんですけど。いつも旅から帰って来ると、就活の前に、まずは大掃除なんです」

 渡会さんとの別れがさみしくて、私はわざとはしゃいだ声だを出した。

「だめだな」

 私のアパートの手前でなぜか車を止めた渡会さんはつぶやいた。

「え? ……っ、」

 厳しい表情の渡会さんが見ているものを追って、息をのんだ。
 通りに面している、私の部屋のドアには。

『泥棒』
『この部屋の住人は詐欺の仲間です』
 など書かれたチラシが張られまくっており。

「あそこに置かれているのは君の私物か?」

 渡会さんが視線で示してきた電柱の脇のゴミ集積所には、私の荷物が投げ出されるように捨てられてあった。