月の砂漠でプロポーズ

 あ然、呆然、愕然。
 この場合、あてはまる語句をのべよ。

 現実逃避していた私は、どれくらいぴくりとも開かないドアを見つめたことだろう。
 とりあえず。
 私は手首にはめたままだった、ゴム紐で髪を纏めた。

 あたられた客室に入り、さきほど着替えたワンピースを脱ぐ。
 トランクの中に戻しがてら、部屋着に着替える。
 ゴムがのびきって、洗濯しまくった結果生地がてろてろになって最高に着心地がよくなった、Tシャツとホットパンツ。

 本来寝間着なんだけど、この部屋を掃除するのに適した格好がこれしかない。

 ユーティリティルームには掃除機や化学布巾などもあった。
 とりあえず、手荒れ防止用のゴム手袋と、飛行機内の乾燥防止用のマスクがトランクに入っていてよかった。

 髪は仕方ない。

 サニタリーコーナーにあったタオル類はひとまず、全部洗っちゃる!

「いざ!」

 ……なにが悲しくて、旅行の代わりに他人様の部屋掃除を勤しむのかについては考えないことにする。

 一日、一か所を目標に掃除していく。
 とりあえずは私の当面のねぐらからだ。