「え?」

「君の自宅、少なくとも警察の入口は債権者達が君を待ち構えている」

 出待ちか!
 ツッコミかけたあと、即座に理解した。

 彼女達は私を一番の恋敵、そして弁済義務があると思い込んでるからだ。
 林がみつからない以上、私に鬱憤をぶつけるしかないんだもの。
 空港で取り囲まれていたことを思い出したら、自然に体が震えてきた。

「警察で保護してもらえれば面倒が減るんだが」

 渡会さんが刑事さんを見れば、困ったような返事があった。

「勘弁してください、まだ高畑さんは呼んで事情を聴いただけです」

 ……()()ときたもんだ。

「彼女は逮捕されていないし起訴もされてない。勾留なんかできないです」

 考えすぎかもしれないけれど、いずれ時間の問題と言われてる気がしてしまう。

 でも、警察の管轄ではないから保護する理由もないということなんだろう。

 でも、私だって貴方達がまもるべき市民じゃないのか。
 濡れ衣を着せられそうになっている私こそ、庇護してくれるべきではないの?

 海外に行くときには外務省の、その国向けの注意を調べることにしている。
 政情不安とか天災、伝染病とか。注意勧告の有無でも安全度は全然違ってくる。

 私はあれを見て、『国民は国の傘の下にいる』となんとなく思っていたんだけれど、違うんだ。

 今の私に、味方などいない。渡会さんだって、必要から私に接しているだけだ。

 取り調べ室とはいえど空調が効いていて寒くないはずなのに、私は両腕で自分の体を抱きしめた。