月の砂漠でプロポーズ

「だとしたら、林が君の印鑑を購入した可能性もある。調べてみよう」

「……三文判で実印登録されたりしませんか?」

 私が怯えて訊けば、刑事さんが首を振った。

「本人じゃないと、登録には時間がかかるんです」

 代理人でも届け出は可能だが、すぐに受理できない仕組みになっているらしい。

 大抵の役所では、と前置きして教えてくれた。

 登録申請時に登録する本人からの委任状が必要だ。
 申請後、照会書を登録する本人の住民登録地あてに転送不可で郵送する。

 本人限定での受け取りの為、郵便局で転送届を出しても照会書が届かない仕組みらしい。

 照会書が届いたら、照会書内の回答書欄に必要事項を記入して、指定期日までに持参するんだそうだ。

「たしか、来庁者の本人確認書類が必要なんです。官公署発行の顔写真のあるものは一点、保険証等顔写真のないものは二点以上。それと勿論、必要事項を記入した照会書。ですよね?」

 刑事さんが説明してくれながら渡会さんに確認している。
 渡会さんを見ると、役所によって多少の手続きの違いはあるが概ねはそうだと同意した。

 刑事さんも詳しいな。

「さっきも説明しましたけれど、自分は捜査二課担当なんです」

 ドラマで捜査一課とよく訊くけど、二課はなんの担当なんだろう。

「知能犯担当です。詐欺や収賄、通貨偽造とか。僕は赤サギを担当しています」

 瞬間、ピンク色のフラミンゴを想像してしまった。 鷺って鳥がわからないので似てるかわからないけど。
 首を捻れば結婚詐欺の隠語だと教えてくれた。ほほう。