月の砂漠でプロポーズ

「私なんかより、林を捕まえてあいつに請求するのが筋ですよねっ?」

 私こそ、この怒りはどこに向ければいいの。

「君は連帯保証人だ。通常の保証人と違って、以下の権利がない」

 渡会さんが説明してくれた。

「『催告の抗弁権』がない。これは『先に借金した本人に請求してほしい』と言う権利がないという意味だ」

「そんな……!」

「次に『検索の抗弁権』がない。『先に借金した本人から差し押さえにしてほしい』と言う権利もないといううことだ」

 理不尽すぎる!
 にらんだら、連帯保証人は返済者本人と同等に扱われるのだと説明された。

「最後に、『分別の利益』がない。これは『保証人が複数いるなら、人数割してほしい』という権利だが、そもそも林には君しか保証人がいない」

「……なんで、私がこんな目に遭うんですか……」

 私は膝の上にある拳を、涙ぐんだ目でにらむしかなかった。
 林ィ〜!
 膝裏をカックンするだけでは済まない。
 床を綺麗にしたモップをゆすいだ水を溜めた風呂に頭のてっぺんまで浸からせてやるっ!

 不思議なことを聞かれた。

「債権者は君に確認の連絡をしてきたか?」

 へ?

「いいえ、誰も」

「保証契約を締結する場合、金融業者には保証人に直接の意思確認をする義務がある。君の場合は個人だが……。女性陣が君への保証意思の確認を怠っていた場合には、押印のある契約書が存在する場合であっても、保証契約をしていないことが認められる可能性がある」

「……勝率は?」

 藁にも縋る想いで訊ねてみたが、答えは残酷なものだった。

「かなり低い」
「ハ」

 嗤うしかない。