月の砂漠でプロポーズ

 日焼けしていて背が高く、一八〇センチ以上はあるだろうか。
 がっしりしている。
 涼やかな目もと、通った鼻筋、薄い唇。
 男らしく美しい顔立ち、はっきり言って美形、イケメン。

 どれだけイケメンかというと、ハンサムだなーとこっそり思っていた林の顔が、へのへのもへじにしか思えなくなったくらいだ。

 均整の取れた体つきがあいまって、ノーネクタイのシャツにジャケットとカジュアルなボトムを合わせただけなのに芸能人のようだ。

 俳優やモデルっておそらく画像処理しているのだろうと思っていた。
 が、ごめんなさい。
 渡会さんを眼の当たりにして美形というのは本当に三次元に棲息しているのだと実感した。

 この人に比べれば、林はあまりに安っぽすぎる。

「被害者の男性陣から弁護を任されている」

 いいよね、お金を持っている人は。

 名誉棄損くらいで簡単に訴えることが出来て、護ってくれる人を沢山雇えるなんて。
 私なんて、国選弁護士をお願いするのがせいぜいなのに。
 罪もないのに犯罪者扱いされて、実名報道されちゃったりするのに。
 私の名誉はどうなるの。

「早速ですが、彼女の筆跡と連帯保証人欄の筆跡鑑定を。あとは、林と高畑さんが写った写真の合成判定を」

 渡会さんが刑事にさんに話しかけた言葉に、目がぱちくりした。

「助けてくれるんですか!」

 縋るようにみつめれば、渡会さんの目はとても冷静だった。

「男性陣も君を告訴したいという考えでね。まずは事実確認が必要だ」

「……名誉を傷つけられて、怒りの落としどころを私に求めてるということですね」

 渡会さんははっきりとは肯定しなかったけれど、否定しなかったということはそういうことなんだ。