月の砂漠でプロポーズ

 そのまま机につっぷしていると、ドアが開く音がした。
 私を取り調べていた人に誰かがひそひそと耳打ちをしているみたい。

「高畑さん、弁護士の方が見えましたよ」

 え?
 がばりと顔をあげた。

 接見てやつだろうか。
 でも私、頼んでない。
 そもそも有罪にならないと弁護士って頼めないのでは。
 ということは私、なにもしていないのに犯人にされちゃうの?

 泣きそうな私に刑事さんがぶんぶんと手を振る。

「違う違う。林が騙った男性陣の弁護士を務める人が貴女の話を聞きたいんだそうです」

 取り調べの人に否定されてしまった。

 ……なんだ。
 私を護って戦ってくれる人じゃないんだ。

 ――誰も助けてくれない――
 体の中に氷の芯が出来たような気持ちになる。
 その冷たさはじわじわと四肢を冒していく。

「弁護士の渡会諒(わたらい りょう)だ」

 低く落ちついた声に、俯いてしまっていたけれど目だけあげてワタライさんを見た。
 目を見開いてかたまった。