カリスマ美容師は閉ざされた心に愛をそそぐ


 『自己紹介、まだだったわね。私、松本朝日、あさひって呼んで!』

 「え~と私は…『下の名前だけでいいよ』


 「ひなです。月と描いてひなと読みます」


 『ステキな名前ネ』


 “えーと、あの…どうしようかなぁ”


 『ゴメンね、突然声を掛けられてビックリしているよね、月ちゃんの顔を見ていたらほおっておけなくて』


『これもなにかの縁だと思って、私とお茶を付き合って欲しいの』


 ニコッとした笑顔を返された。


 私はどれだけ暗い顔をしていたのだろう、ハァァァー。


 まぁ、暇だから、悪い人には見えないしね。


 甘酸っぱいローズヒップを一口、一口ずつコクンと飲み込む。


 『あ?!、空を見て!』


 “なんだろう、この天気”


 『月ちゃんの…こころの中みたいネ』


 “わたしの心の中???”


 真っ黒い雲と明るい太陽の空、お店のベランダに出てみれば、雲と雲の間からは弱い雪混じりの雨。


 黒い雲も光りもどちらも譲らない。


 雨も雪も光りに照らされ、キラキラと美しい。


 やみそうで、やまない。


 どちらも同じように少しずつ乾いたアスファルトをゆっくり濡らしていく。


 “私の心の中かぁぁぁ…”


 晴れも曇りも選べない自分。