あやかし戦記 千年前の涙

「ツヤさんがご自分を責めて、生きていたくないと思ってしまうのは仕方ないことだと思います。あんなに辛いことを体験したら、誰だってきっとそうなります。でも、私はツヤさんが生きてくれたことが嬉しいです。ツヤさんに会えたことが本当に嬉しいです」

出会いは最悪だった。第一印象は決してよくなかった。そんな中、今まで知らなかった妖のことを教わり、アレス騎士団の一員となり、妖と共存したいと思いながら戦ってきた。

任務をこなすたびに、ツヤのあの時は見えなかった優しさを知った。かけがえのない仲間の一人となった。だからこそ、イヅナはツヤが苦しむ姿を見るのが辛いのだ。

イヅナが手に少し力を入れ、「ここにいますから。ツヤさんが戻ってくるまでずっといます」と優しく言うと、その手が少し握り返されたような気がした。

イヅナが顔を上げると、ツヤの赤い瞳から涙が溢れて零れ落ちていく。この前のような子どものような激しい泣き方ではなく、静かな泣き方だった。