ツヤの千年前の長い話が終わり、部屋は静まり返る。だが、誰も口を開くことはできず、重い空気が漂っている。

ツヤは血の繋がった父親から実験体にされ、妖にされ、そして父親と戦わなくてはならないのだ。それがどれだけ重いことか、イヅナの頬を汗が伝う。

時計の針だけが動く部屋で、俯きながら話していたツヤが小さく何かを呟く。そしてその数秒後、大きな悲鳴に似た叫び声を上げた。

「あたしは、大事な姉さんや母さんのことを忘れてた。最低な化け物!姉さんのかけた呪いがなかったら、きっと数え切れないくらい人間を殺して喰っていた!ただ危険なだけの存在!あたしは、あたしは、あそこで朽ち果てるべきだった。鬼になってまで生きてはいけなかった!姉さん、姉さんが生きていた方が……」

泣きながらツヤは頭を乱暴に掻き毟る。これほど自暴自棄になり、マイナスな発言をするツヤの姿をイヅナは一度も見たことがない。だからこそ、どう声をかけたらいいのかがわからないのだ。