ツヤとカスミはいつものように実験されることになったのだが、カスミが先に連れ出された。そして一時間ほど経ち、ツヤが実験室に連れて行かれた時、心臓が止まったようなショックを覚えた。

カスミが台の上に寝かされている。だが、その瞳や体はピクリとも動かない。いつもならば意識が朦朧としていても、カスミはツヤの方を向いてくれるのだ。

ドクドクと嫌な予感がツヤの中を巡る。冷や汗が背中を伝っていく。掠れた声で「姉さん?」と呟くも、カスミは何の反応も示さない。

「姉さん?姉さん?冗談はやめて!」

カスミを勢いよく揺さぶるものの、カスミは眠ったままだ。その様子を見てミツヒデが小馬鹿にしたように言う。

「そいつは実験についてこれなかった。使えなかった。まあ、死んでも誰も困らんだろう」

ツヤの動きがピタリと止まる。頭の中を駆け巡るのは、カスミと笑い合った日々だ。カスミはまだ二十二歳だ。語り合ったしたいことを何一つできないまま父親に殺され、その父親に馬鹿にされている。ツヤがこれ以上怒りを感じるものはなかった。