あやかし戦記 千年前の涙

二人は実験が終わるとまともに動かない体を何とか動かし、抱き締め合って過ごした。そして、この地獄から逃げ出せたらしたいことを話すのだ。

「母さんの墓参りに行って、二人で旅行に行きたい。姉さんの行きたい場所に行きたい」

「私はね、ツヤの作ってくれるお味噌汁が飲みたい。あと、一緒に甘味処に行ってあんみつを食べたいわ。お母さんの大好きだったあんみつ」

薬の影響でどうなってしまうのか、誰も教えてはくれない。だからこそ耳に意識を集中させ、情報を得ようとした。

悪魔たちにはそれぞれ名前があり、サタン、ルシファー、ベルゼブブ、アスモデウス、ベルフェゴール、レヴィアタン、マモンと言う。それぞれ得意なことも役割も違うらしい。

薬は人間の体を妖に変え、理性を奪ってしまうものらしい。それを知った時、ツヤとカスミの体の震えは止まらなかった。

そして、実験体にされてから三年の月日が流れた頃、ツヤの体に異変が起こり始める。

その日は実験室に連れて行かれたのは、カスミだけだった。カスミは数時間後にボロボロの状態で帰って来た。

「姉さん！」