「そんな顔しないで。大丈夫よ」

「でも……」

俯くイヅナの頭が乱暴に撫で回される。イヅナの黒髪をぐちゃぐちゃにしたのはレオナードだ。彼は太陽のような笑顔を浮かべ、「チェルシーさんの言う通りだぞ!」と口を開く。

「そんな顔してたら、ツヤさんに怒られるんじゃないのか?「そんな顔する暇があるなら特訓でもしてろ」って言いそうじゃん」

「……そう、かしら?」

「ツヤさん、鬼だから人より体は丈夫だ。あれくらいの怪我ならすぐ治っちまうだろ」

チェルシーとレオナードが明るく振る舞ってくれるおかげで、少しずつイヅナの心が落ち着いていく。荒れていた心の波が収まり、完全に凪いだ頃、子どもたちの避難誘導を終えたヴィンセント・レゴシが走ってくる。

「無事でよかった……」

大きく息を吐くヴィンセントに対し、イヅナたちは起こったことを包み隠さず全て報告した。途端に穏やかだったヴィンセントの顔が険しくなる。