「奥さん、手が止まっていますが?」

「えっ、いや、そんなことないょう?」

慌てて手にしていたまんが本を閉じたが、裏返った声ではバレバレだ。

「ほら、早く済ませて映画観に行くんじゃなかったの?」

私の周りには仕分けの済んでいない本がまだまだ広がっていた。

「……ほんとに処分しなきゃ、ダメ?」
このまんがもあのまんがも思い出深くて捨てたくない。

「だって収納スペース足りなくなったんだから仕方ないでしょ?」

それは、彼の言うとおりなのだけれど。

「いっそ、家でも建てますか、奥さん?」

「ほんとに!?」

家かー、妄想捗っちゃうかも。

「家族が増えると、この部屋じゃ狭いですからね」

彼が膨らみはじめた私のお腹へ、愛おしそうに視線を向ける。
子供のためにもパパには頑張ってもらわなきゃ。