「好き、だよ?」

「……」

「好き、だってば」

「……だから?」

本から顔を上げた彼の、眼鏡のレンズの向こうから冷たい視線。

「俺、本読んでるんだけど。
静かにしててもらえる?」

彼の視線は再び本に取られてしまった。
泣きそうになってぎゅっと強く、スカートを掴む。
……はぁーっ、ため息の音に顔を上げると、本を閉じた彼が呆れたように私を見てた。

「さっきからなにが言いたいの?」

「……もっとかまって欲しい」

「ふーん。
どんなふうに?」

「あ、えっと」

「言えないんだ」

彼の顔が近づいてきたかと思ったらキスされた。
はぁ、唇が離れるとため息が落ちる。

「これでいい?」

レンズが光ってて、彼の表情はわからなかった。