……学校行ったら。
前の席の、男子の髪が跳ねてた。

……寝癖、なのかな。

机の上に身を乗り出し、そーっと跳ねてる髪を押さえてみる。
ちょっとだけ堅い、髪の感触。
手を離すとピコッとまた跳ねた。
友達との話に夢中になってる彼は、気付いてない模様。
もう一度そっと押さえて手を離す。

――ピコッ。

……ふふっ。

面白くなってきた私は、夢中になって彼の髪をピコピコさせ続けた。

「……あのさ。
さっきからなに、やってるわけ?」

髪を押さえた手を離そうとしたら、彼に手を掴まれた。
困惑気味の彼が振り返る。

「……気付いてたんだ」

「もう。
はじめから」

……はぁーっ。
ため息をつくと彼は、左のフレームを持って眼鏡をあげた。

「その、なんかちょっと、面白かった、から」

「ふーん」

レンズの奥の瞳が、意味深そうに笑う。

「好きな子にそんなことされたら、たまんないんだけど」