「ねえ。
これ、どう思う?」

課長の言葉にため息。
だってこれは「考え直さない?」だから。

「まだ考慮の余地があると思いますので、検討し直してみます」

「うん。
よろしく頼むよ」

企画書を受け取ると、課長はにやりと笑った。
その顔に頬が熱くなる。

……意識しちゃ、ダメ。
だって、私たちはもう、終わったんだから。

課長と別れたのは三ヶ月前。

……課長が専務のお嬢さんとお見合いしたから。

別れを切り出した私に、課長はなにも言わなかった。

「俺さ。
今度会社辞めて、前々から誘われてた友達と独立するんだけど」

「ああそうですか」

偶然乗り合わせたエレベーター。
しかも間が悪いことにふたりっきり。

「当然、このあいだの見合いなんか意味なかったわけなんだけど。
……ねえ。
これ、どう思う?」

そう言うと課長はにやりと笑った。