会社の飲み会帰り。
今日もいつものように彼といっしょ。
同僚に言わせれば、同じ方向というだけで一緒に帰り、そしていままでなにもない、というのが不思議だそうだ。

「ほんと課長のネガティブ思考、まいるよね」

「そうだな」

同じタクシー。
少し開けて並んで座る。

「しまった。
乗る前にコンビニでお茶買えばよかった」

「なに、喉渇いてんの?
飲む?」

「うん」

いつ買ったんだか、そう思いながら彼からペットボトルを受け取って飲む。

「ありがと」

三分の一ほど空けて返すと、彼はそのまま蓋を開けて口をつけた。

……これって間接キス?
まるで高校生みたいなことを考えて顔が熱くなった。

「……なあ。
今日こそ俺んちまで一緒に乗っていかないか?」

彼の手が伸びてきて私の手を握った。
思わず私は俯いたまま、頷いていた。