すぐ届く位置にいるのに、抱きしめられない。
触れられない距離がもどかしい。

「包めるものはありますか?」
玲は給仕に声をかけて、厨房にいるシェフに簡単に食べられるサンドウィッチや果物を用意するように伝えた。

「予定を前倒ししましょう。」
玲は咲にせめてもと微笑みかけて、椅子を戻す。
「まずは着替えからですね。歩きやすい靴に履き替えましょう。」
玲の言葉に咲の体から力が抜ける。

咲は部屋に戻り歩きやすく動きやすい服に着替えると、廊下で待っていた玲と一緒に庭園に向かった。