『兄ちゃんに、髪切ってもらいに来たんだ。そのあと、旺太とメシ食う約束してて。終わるまで旺太の相手してやってくんね?』
「え。それはちょっと…」とか。
「うん。わかったよー」とか。
拓海くんは、あたしの返事を待たずに行ってしまった。
「………」
「………」
近くのコーヒーショップで、旺太くんと向かい合って座る。
放心状態のあたしに掛ける言葉もないらしい。
旺太くんは、はぁ、とか。ふぅ、とか。息を吐いては、うなだれている。
「 拓海くんのお兄さんが、…トモキさんで。……拓海くんと、旺太くんは、友だちで。」
「あたしと、旺太くんは、小学校が一緒で……。二ヶ月だけ、だけど…。一緒だった」
そう。
ずっと、引っかかっていた。
『………二階堂、……華乃?N北小の、二階堂華乃、』
あたしの名前を聞いて、『N北小の』って言ったんだ。
つまり、あの時点で。旺太くんは、あたしがどこの誰かわかってた、ってこと。
カァッと、顔が熱くなる。
あたしは、全然。
全く気づかなかった。
「……ごめんなさい」
「なんで謝んの?」
「だって、…気づかなかったから」
「当然じゃない?たったの二ヶ月だし。十年も前の話だし」
それでも、ショックっていうか。
たとえ二ヶ月だったとはいえ、旺太くんと一緒に過ごしていたのに。
初めて会ったかのように接してしまった。



